ゼロの使い魔保管庫
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小さな領地の中に、ひとつだけある大きなお屋敷。そこの庭で、5人の子どもたちが白い長方形のテーブルを囲んでいる。年のころは7・8歳といったところか。 時刻は正午を過ぎたほど。お茶会にはちょうどいい時間帯だ。 子どもたちも陽気に誘われたのか、テーブルの上には人数分のティーカップとお菓子が置いてある。大きな木の下で行われているそれは、まるでなにかの絵本の中のようだ。 そんな可愛らしいお茶会に、小さな火花が散っていた。 「ぜーったいきみよりぼくの方が強い!」 「ううん、絶対おれの方が強い!」 二人の少年がテーブルごしに額を付き合わせている。 片方は癖のある金髪で、いかにも貴族な感じの少年だ。もう片方は、田舎っぽいイタズラ顔の少年である。 「なら、けっとうだ!」 「望むところだ!」 「もう、やめなさいよ」 少年たちが立ち上がって歩き出したのを見て、茶髪の少女が耐えかねて止めに入る。周りから見るとほほえましい光景であるが、本人たちにとっては一大事だ。 そこに、お盆にティーポットを乗せた黒髪のメイドが現れた。 「ほらほら、ケンカはお止めなさいな。おちびちゃんたち」 そう言って、メイドはお盆をテーブルの上に置いた。それから、二人の少年の頭に手を乗せ、二人の目線に合うよう腰を下げた。 「本当に強い男の子は、こんなことではケンカしないのよ」 メイドの優しい声に、二人はばつが悪いといった風に俯いた。金髪の少年が目線だけ上げてメイドに尋ねる。 「……でも、父さまは強いけどケンカするよ?」 「そうでしょうね。でも、あなたたちのお父さまはこんな強さを証明するために戦ったりなんかしたかしら?」 その言葉に、二人は顔を赤らめた。代わりに、さっきまでクッキーを口いっぱいに頬張っていた少女が尋ねた。 「じゃあ、本当に強い男は、なんでケンカするの?」 「大切な人を守るためよ」 「大切な人?誰のこと?」 メイドは少し微笑んで、不思議そうに首をかしげる子どもたちの顔を見た。 「あなたたちが大きくなったらわかるわよ」 「えー、教えてよ!」 先ほどまでのしおらしい態度はどこへやら。不満そうに頬を膨らます少年たちに、メイドは諭すように囁く。 「これはね、自分で探さないと意味がないのよ。だから頑張りなさい、小さな騎士さんたち」 「ケチ!意地悪!」 子どもたちはさらに不満そうな声をあげた。 メイドは、聞こえないふりをして立ち上がり、お茶を入れ直す。 屋敷へ戻る直前、メイドはまだ膨れっ面の少年たちにくすりと笑い、 「どうしても知りたいなら、旦那さまに聞きなさいな」 と言って去っていった。 「旦那さまって……りょうしゅさまのことかあ」 イタズラ顔の少年が呟いた。それを聞いた金髪の少年が身体を乗り出した。 「あの人、すごいんだろ!父さまが言ってた、七万人の敵を一人でやっつけたって!」 「えー、わたしはあなたの父さまを倒したって聞いたわよ?」 茶髪の少女の言葉に、金髪の少年はムキになって反論する。 「そんなことあるもんか!ぼくの父さまと、ハルケギニアの英雄は友達だぞ!」 「ハルケギニアの英雄って?」 イタズラ顔の少年が金髪の少年に尋ねた。 「わたしたちのりょうしゅさまのことよ」 食い意地のはった少女が代わりに答える。 「ハルケギニアを、恐ろしい魔法から守ったからって聞いたわ」 「ああ、それ、わたしも聞いたことあるわ」 少女らは、ねーっと言って頷きあった。 「そういえば、りょうしゅさまは、でっかい龍を操れるって聞いたわ」 「えーわたしは空を飛べるって聞いたわよ」 「魔法でもなんでも吸収して、相手に跳ね返せるっていうのもきいたことある」 「うそ、それはないわよー」 みんながてんでばらばらに噂話をするので、子どもたちはわけがわからなくなってきた。 「どれがほんとでどれが嘘なんだかわかんないじゃないか」 イタズラ顔の少年が頭を抱えた。それを見て、食い意地のはった少女は、さっきから一言も発していない少女を指差した。少女は話に加わらず、ずっと空を眺めている。 「あの子に聞きましょ。りょうしゅさまはあの子の父さまじゃない」 「そうだ、なんで気付かなかったんだろう」 「なあ、お前の父さんってほんとはどんな人なんだよ」 イタズラ顔の少年が、少女に話しかけた。少女は空を見上げていた顔を少年の方へ向ける。 「わたしの父さま?」 少女はぽかんとした顔で返事をした。しかし、すぐに質問の意味を理解したのか、誇らしげに笑った。 「わたしの父さまはね……」 少女はそこで一度言葉を切る。それから、母親譲りの桃色がかったブロンドの髪を揺らして言った。 「わたしの父さまは、ゼロの使い魔なの」
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小さな領地の中に、ひとつだけある大きなお屋敷。そこの庭で、5人の子どもたちが白い長方形のテーブルを囲んでいる。年のころは7・8歳といったところか。 時刻は正午を過ぎたほど。お茶会にはちょうどいい時間帯だ。 子どもたちも陽気に誘われたのか、テーブルの上には人数分のティーカップとお菓子が置いてある。大きな木の下で行われているそれは、まるでなにかの絵本の中のようだ。 そんな可愛らしいお茶会に、小さな火花が散っていた。 「ぜーったいきみよりぼくの方が強い!」 「ううん、絶対おれの方が強い!」 二人の少年がテーブルごしに額を付き合わせている。 片方は癖のある金髪で、いかにも貴族な感じの少年だ。もう片方は、田舎っぽいイタズラ顔の少年である。 「なら、けっとうだ!」 「望むところだ!」 「もう、やめなさいよ」 少年たちが立ち上がって歩き出したのを見て、茶髪の少女が耐えかねて止めに入る。周りから見るとほほえましい光景であるが、本人たちにとっては一大事だ。 そこに、お盆にティーポットを乗せた黒髪のメイドが現れた。 「ほらほら、ケンカはお止めなさいな。おちびちゃんたち」 そう言って、メイドはお盆をテーブルの上に置いた。それから、二人の少年の頭に手を乗せ、二人の目線に合うよう腰を下げた。 「本当に強い男の子は、こんなことではケンカしないのよ」 メイドの優しい声に、二人はばつが悪いといった風に俯いた。金髪の少年が目線だけ上げてメイドに尋ねる。 「……でも、父さまは強いけどケンカするよ?」 「そうでしょうね。でも、あなたたちのお父さまはこんな強さを証明するために戦ったりなんかしたかしら?」 その言葉に、二人は顔を赤らめた。代わりに、さっきまでクッキーを口いっぱいに頬張っていた少女が尋ねた。 「じゃあ、本当に強い男は、なんでケンカするの?」 「大切な人を守るためよ」 「大切な人?誰のこと?」 メイドは少し微笑んで、不思議そうに首をかしげる子どもたちの顔を見た。 「あなたたちが大きくなったらわかるわよ」 「えー、教えてよ!」 先ほどまでのしおらしい態度はどこへやら。不満そうに頬を膨らます少年たちに、メイドは諭すように囁く。 「これはね、自分で探さないと意味がないのよ。だから頑張りなさい、小さな騎士さんたち」 「ケチ!意地悪!」 子どもたちはさらに不満そうな声をあげた。 メイドは、聞こえないふりをして立ち上がり、お茶を入れ直す。 屋敷へ戻る直前、メイドはまだ膨れっ面の少年たちにくすりと笑い、 「どうしても知りたいなら、旦那さまに聞きなさいな」 と言って去っていった。 「旦那さまって……りょうしゅさまのことかあ」 イタズラ顔の少年が呟いた。それを聞いた金髪の少年が身体を乗り出した。 「あの人、すごいんだろ!父さまが言ってた、七万人の敵を一人でやっつけたって!」 「えー、わたしはあなたの父さまを倒したって聞いたわよ?」 茶髪の少女の言葉に、金髪の少年はムキになって反論する。 「そんなことあるもんか!ぼくの父さまと、ハルケギニアの英雄は友達だぞ!」 「ハルケギニアの英雄って?」 イタズラ顔の少年が金髪の少年に尋ねた。 「わたしたちのりょうしゅさまのことよ」 食い意地のはった少女が代わりに答える。 「ハルケギニアを、恐ろしい魔法から守ったからって聞いたわ」 「ああ、それ、わたしも聞いたことあるわ」 少女らは、ねーっと言って頷きあった。 「そういえば、りょうしゅさまは、でっかい龍を操れるって聞いたわ」 「えーわたしは空を飛べるって聞いたわよ」 「魔法でもなんでも吸収して、相手に跳ね返せるっていうのもきいたことある」 「うそ、それはないわよー」 みんながてんでばらばらに噂話をするので、子どもたちはわけがわからなくなってきた。 「どれがほんとでどれが嘘なんだかわかんないじゃないか」 イタズラ顔の少年が頭を抱えた。それを見て、食い意地のはった少女は、さっきから一言も発していない少女を指差した。少女は話に加わらず、ずっと空を眺めている。 「あの子に聞きましょ。りょうしゅさまはあの子の父さまじゃない」 「そうだ、なんで気付かなかったんだろう」 「なあ、お前の父さんってほんとはどんな人なんだよ」 イタズラ顔の少年が、少女に話しかけた。少女は空を見上げていた顔を少年の方へ向ける。 「わたしの父さま?」 少女はぽかんとした顔で返事をした。しかし、すぐに質問の意味を理解したのか、誇らしげに笑った。 「わたしの父さまはね……」 少女はそこで一度言葉を切る。それから、母親譲りの桃色がかったブロンドの髪を揺らして言った。 「わたしの父さまは、ゼロの使い魔なの」
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