X00-42-5
Last-modified: 2008-11-10 (月) 23:01:22 (5646d)
X00-42-4のつづきです。 「ミスタ・グラモン」 「明日から水精霊騎士隊の特訓の為だ」 「そうだ。陛下のご命令でな。叙勲式までに君達の力の底上げにな」 「君達も知っての通り、今回の決定は、大盤振る舞いだ。王宮内で表面的には、賛成しているが内心良く思っていない輩は、かなり居る。直接見た者は兎も角、見ていない者にはな。諸侯に至っては今回の決定が伝わったら、王宮に見直しを求めにやって来る輩も出てくるだろう。そういった連中に今回の決定が正当だと納得させる為にな」 「成程、確かにそうですね」 「す・すみません」 「そうか、それではミス・モンモランシは居るかね?」 「なによ、ギーシュ」 「いや、ところで疲労回復薬は沢山有るかね?」 「手持ちの材料だけですと100瓶位ですけど、他の水メイジからかき集めれば500から1,000瓶くらいでしょうか。簡単に作れますが、これだけ大量に作るには、学院の設備をお借りしないと出来ませんけど」 「手配しよう。それからそれではまだまだ足りぬ。あと2,000は必要になる。部下に持ってこさせるので、必要な物を書いてくれ。あと、これは材料費と礼だ。300エキューある。もし足りないようだったら言ってくれ」 「いえ、大丈夫ですが如何してそんな大量に必要なんですか?」 (鬼だ!この人。いえ悪魔だわね。サイトが恐れるわけだ) 「それでは材料をかき集めてきます」 「よろしく頼む。ミスタ・グラモン、大騒ぎするのは構わないが、明日二日酔いでも手は抜かぬからな。朝7時から開始する。全員にそう伝え給え」 「了解いたしました(そんなの聞かされたら騒げないって)」 「それ本当かよ、ギーシュ」 「サイト確か10秒遅刻で、腕立て100回って言ってたな。口答えすれば平手打ち。他に何言っていたっけ」 「忘れた。兎に角機嫌を損ねる=死と思っていればいいんだよ」 翌朝 「サイトにですか?」 「勝ちたいです。でも本当に出来ますか?」 こうしてアニエスの地獄の猛特訓が始まった。 かけがえのない友人であると同時に「絶対勝てない相手」憧れでもある。 ――――――――――――――――――――――――――― 王宮 「サイト殿、これが太守ホーキンス殿への親書です」 才人達を乗せシルフィードは飛び立った。 「テファ、ウエストウッド村の前は、何処に住んでいたんだ?」 「えっ!テファの実家?!それじゃ懐かしいだろう」 「ううん、気にしないで」 「ごめん」 「サイト、次から発言する時は、十分注意しなさい」 「サイト、聞きたい事が有るんだけど」 「私が王位に就いたら領地を返還するって」 「でも私、ハーフエルフだから無理だよ」 「何言ってんの、あんた。王は、優しいだけじゃ務まらないのよ。厳しさや時には非情さが必要なのよ。テファには、そういうの全く無いでしょ」 「確かにそうだけど」 「それに私ずっと世の中と離れて生きて来たから、政治とかそういうの全然分からないわ」 「俺の居た世界でも無能な大臣のせいで国が傾く事あったな」 「兎に角、今日あんたの部下になる人達の人柄を見ましょ。まずは、そこからね」 「そうだな」 「ホーキンス閣下、アンリエッタ女王の親書を携えた方がお見えになりました」 「お通ししてくれ」 「畏まりました」 ドアが開き才人達が中に入るとホーキンスは目を見開いて固まった。 しかしホーキンスは、動かなかった。 「ホーキンス殿?」 「生きて…」 「え?」 「生きていらっしゃのですね」 「あのう」 「あっ、申し訳ありません。失礼たしました。あまりにも驚いてしまったので」 「どうなされたのですか?」 「貴方は覚えていらしゃらないのでしょうが、私はこの眼に焼き付いております。鬼神の如く我が軍を貫き、私に剣を突き付けて力尽きた貴方を」 「じゃあ、あの時の敵将は」 「ええ、私です。ですがどうやって助かったのです?とても助かる怪我ではなかったはずですが」 「此処に居る、ティファニアのお母さんの形見の指輪の力で助かったのです。実際一度心臓止まってたそうですし」 「あれ程の大怪我を治す指輪?聞いた事有りませんね」 「ええ、そうでしょうね。それよりも親書を受け取ってください」 「失礼致しました。早速拝見させて頂きます」 「ホーキンス殿」 「サイト様、大公叙勲おめでとうごいます。心よりお祝い申し上げます」 「そうは参りません。私の主君なのですから」 「無論ティファニア様もです。正式には、王位に就かれてからですが」 「ホーキンス殿は、ティファニアが王位に就くのを賛成してくれますか?」 「ですが、他の人々は反対為さるでしょう」 「やはりそうですよね。…ホーキンス殿お願いがあります。ティファニアが王位に就けるよう尽力して欲しいのです」 「サイト」 「畏まりました。このホーキンス一身を掛け尽力いたします」 「それから国税はどうする事も出来ませんが、領主税は徴収しないで下さい。そうすれば領民の人達は、多少生活が楽になるでしょう」 「ちょっとあんた何言ってるのよ。領主税取らないなんて」 「ホーキンス殿、これを受け取ってください」 「今は、1エキューも振り込まれていませんが、1ヶ月後トリスタニアでドラゴンをオークションに懸けて、その売り上げ…俺が倒した分の1%が振り込まれます。多分100万エキュー位になる筈です。それを使ってこちらを復興して下さい」 「あんた、今回の叙勲の報酬殆ど貰わないつもり?」 「あんたならそう言うと思ったわよ」 「サイト様、本当に宜しいんですか?」 「それではこれで失礼致します。先程の件宜しくお願いいたします」 そう言って才人達が部屋を出て、ホールの中央付近にやって来た時、ホーキンスが才人に近づき、杖を掲げ膝をついた。 「私の貴方様への忠誠を皆に知らしめているのです。お気になさらないで下さい」 すると周りにいた人々が集まり、ホーキンスと同じように杖を掲げ膝をつき 才人は、頭を抱えた。これだから貴族ってやつは。 「私は、命を懸けて仕えるべき主君に出会えたのです。後悔なぞする筈ありません」 「サイト様、お急ぎでないなら、領地をご案内致します。是非見て行って下さい」 「ルイズ、どうする?」 「ではお願い致します」 |
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